2017年7月30日日曜日

優秀な人は早く辞めがち。

語弊がありますね。
もちろん辞めなくて優秀な人はたくさんいらっしゃいますよ。
いや辞めずにどんな職場でも自分の実力を発揮できる人こそ優秀です。

ある先輩がこんなことを言いました。
「新人は辞める権利すらない」
これも語弊がありますが、言い得て妙でもあります。
会社に就職するということはもう周囲を巻き込んでいます。
もう自分勝手にはいかない身の上です。
会社は新人を教育します。お金をかけて、給料も払いながら。
使いモノにならない新人さんは初めは会社にいろんなものを借りている状態です。
とりあえず借りたものは返さなければなりません。

当たり前の話はここまでとして。

優秀な人が辞めちゃって惜しいという話。
皆さん初めは真面目に情熱を持って仕事に臨みます。
それはもう真面目に消耗していきます。
さらに見込みがある人は周囲も期待しますので、自ずと他の人より仕事が多くなり、疲労困憊の日々が続きます。
その代償としての給料もなかなか反映しません。
会社は自分を過小評価していると段々考えていきます。

そして…辞めちゃいます。

実は会社が社員を評価するのは社外の人からの声が一番効きます。
海外で賞を獲ったりすると一気に箔がつくみたいな。
日本人っぽいと言いましょうか、外からの評価に弱いんです。

奢らず腐らずに、仕事の辛いことばかりに目を向けず面白いことや楽しいところを見つけて補充したらいいなと思います。
消耗するけど補充もする、どっちも仕事の中で成り立てば、嫌で辞めるなんて結果にならず、仕事を楽しめますよ。

あとそうそう、
楽しそうに仕事する人にはとても好感が持てます。

2017年6月22日木曜日

チーム。

お互いを信頼せず、各々の役割を全うせず、コーチの助言も聞かないチームは負けます。
何の話でしょう。

青臭い話です。

広告は水物です。
時代によって、その年によって、その日によっても消費者の反応は変わります。
流れを読む、流れを創りだせるプロに任せるのが良いのでしょうね。たぶん。

即効性のある広告、ジワジワと浸透する広告、一旦拒絶後、徐々に効果を発揮する広告、いろいろな戦略があるので一概には言えませんが、オンエア後、イマイチの結果で戦略的にも変えた方が良いと判断したならば、
その時こそは企画を練り直したり、スタッフを見直したり、総取っ替えしたりすればいいと思います。

プロフェッショナルは結果によってシビアに判断されるべきです。
しかしまずは、
コーチを信じて、一致団結、各々の役割を全うし、思いっきりやってみる。

やりきっているCMはやはり面白く、効果もあると思います。

同じ目標に向かってチーム一丸となって邁進しよう!
そんな古臭いスローガンをもう一度思い出した方が良いかもしれません。

CMは団体競技かも

2017年6月15日木曜日

TVCMの仕事。“照明技師・照明部”

現場での照明部は基本的に照明技師、照明チーフ、照明助手(10名ほど)で構成されます。

照明技師は
演出コンテを元にカメラマンや美術スタッフ、時には仕上げのエディター等と連携して、照明規模などを算出し、照明機材の選択、助手の人数、照明プランを組み立てる技師です。映像を作り込むというより光と影で世界観を作るといった方が近い感じでしょうか。
予算によってはクロマキーのバックなども合わせて準備することもあります。
合成っぽい。“光の不一致”」でも書きましたが、別撮り(主にロケ)で撮影した素材の再現には経験とセンスが問われる重要なスタッフです。

照明チーフは
技師の意向に合わせて10名(規模によってはそれ以上)の助手を統括し、電源の取り回し、フィルターや各種照明の配置を指示します。撮影によってはかなり大掛かりになり、危険な作業を伴うため、効率よく安全に照明助手の作業段取りを組み立てる能力が必要です。

照明助手は
照明チーフの指示通りにスタジオ内のあらゆる足場(例えば、二重=天井下に張られた照明用の足場)に照明機材を設置したり、ライトの調整を行います。
照明機材はかなり重く熱く、しかも電源も取り扱うため大変危険を伴います。ライトを点けると二重などの足場は40度を軽く超える温度になります。TVCMの仕事の中でもっともガテン系の屈強なスタッフ達です。現場では誰よりも早くセッティングを始め、誰よりも遅くまで撤収にかかる、本当に大変な仕事です。

?な名前の機材たち
照明機材にはちょっと?な名前の機材があります。
代表的なものをいくつか。

イントレ
カメラや照明など高い位置からのアプローチが必要な時に組む足場。
映画「イントレランス」が語源ですが、
・俯瞰の代名詞的映画だから。
・初めてこのような足場が組まれた映画だから。
・”イントレランス”の和訳が”不寛容”=俯瞰用から。
諸説あります。

センチュリー(スタンド)
照明機材用の三脚スタンド。
不整地スタンドとも呼ばれ、平地ではなくても垂直に立てられ、
接続部の形状により斜め等自由に組めるのが重宝されるスタンド。
Matthews Studio Equipment, Inc.の登録商標が現場で一般に使われるようになりました。ホッチキスやセロテープ的な。

カポック
発泡スチロール製のレフ板。
語源は謎です。軽い発泡スチロール=軽い綿のような繊維=パンヤ=カポックという感じでしょうか。
白や黒いモノもあり、軽く、簡単にカッターで切れるため、様々な用途に使える。
徹夜撮影の時は床に敷いて寝たこともあります(笑)

2017年6月9日金曜日

TVCMの仕事。“カメラマン・撮影部”

現場での撮影部は基本的にムービーカメラマン(撮影技師)、撮影チーフ、セカンド(+サード)の3〜4人体制で構成されます。

ムービーカメラマン(撮影技師)は
演出コンテを元にカメラ機材(レンズ他含む)の選択から照明、美術スタッフや、時にはCG部、仕上げのエディターなどと連携して映像に関わるあらゆる設定を指示し撮影をします。演出意図にあった画づくりの提案などを行うカメラマンもいます。
撮影後はカラーグレーディング(カラリストと共に映像のトーンや色調整)し、CMディレクターが望む映像を具現化します。

撮影チーフは
露出の計測、照明部との調整やカメラマンの意向に沿ったセッティングをする、最もカメラマンに近いアシスタントです。

セカンド(+サード)は
機材運搬から各機材のチェック、被写体までの距離の計測、フォーカス合わせ(ピントマン)、カメラ周りの雑用もします。


そういえば最近はあまり聞きませんが、スチールカメラマンがを”カメラマン”、ムービーカメラマンの事を”キャメラマン”と区別して呼称していましたね。

・・・

撮影もここ20年ほどで、
フィルム撮影時代から、ビデオテープ収録、さらにデータ収録へと変わってきました。

それに伴って、ラボ(現像所)のタイミング(フィルムのトーン、色を調整するスタッフ)も、カラリストとVE(ビデオ・エンジニア)に取って代わり、VEも今やDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)と呼ばれるスタッフへと変遷してきました。

スクリーンに映写するかテレビに映すしかなかった時代から、映像のカタチもフォーマットも多岐にわたり複雑化しています。
数々の用途に応じたカメラ機材と適したフォーマットの特徴、収録する技術、ノウハウが撮影部にも求められてきています。

カメラの高さ調整時に見る撮影部の一体感がなんか好きです。


2017年6月5日月曜日

TVCMの仕事。“CMディレクター”

CMディレクター(=監督)
TVCM実制作に於ける演出担当者。

企画をもとにTVCMを最も効果的に具現化する仕事です。
現代の風潮を読み、世の中受けする感覚を知っていなければ務まりません。

映像制作プロダクション所属の社内ディレクターやフリーランスのCMディレクターが主流ですが、映画監督やアニメ監督、ミュージックビデオの監督など様々な業種から抜擢される場合もあります。
しかし30秒、15秒というサイズに収めるには、職人技とも言える独特のセンスが必要であり、専門に演出しているCMディレクターの方が完成度に分があるケースが多いようです。

映画やアート系の映像作品と違い、広告の場合はあくまで商品や企業イメージを売る事が目的のため、演出に於ける思考の出発点はクライアント側にあります。

好感であれ共感であれ、一人でも多く視聴者を消費者に仕向ける計算と、巧みな演出ができるのが優秀なCMディレクターと言えます。

”ザ監督”

2017年6月2日金曜日

TVCMの仕事。“制作進行”

制作進行(=通称、制作=PM=プロダクションマネージャー)

その名の通り、CM制作を進行させる人。

プロデューサーの補佐をし、実行予算作成管理からスタッフの弁当手配まで制作全般のありとあらゆることを段取り仕切る仕事です。

CM制作部に配属された新人はまずこの仕事に就きます。
先輩の制作に付き、CM制作の”いろは”を学んでいきます。初めは雑用ばかりですが、実はこの雑用ぐらい”軽く”こなせないと優秀な制作にはなれません。”これ誰がやるの?”的なものもすべて制作の仕事なのです。

優秀な制作にはすべての情報が集まります。情報の把握とその交通整理、予算を管理し、軽く雑用もこなす。

まさにCM制作の要が制作進行なのです。

逆にその案件について、知らない事、もしくは知らされていない事がある制作さんは、まだまだ一人前ではないのかもしれません。

2017年5月27日土曜日

TVCMの仕事。“プロデューサー”

予算管理から作品のクオリティ管理まで、制作部の責任者。

基本的には映像制作プロダクションに所属し、実制作スタッフを統括する存在です。

TV業界や映画業界とは違い、TVCMのプロデューサーの仕事はクライアント、広告代理店と制作スタッフとを結ぶ営業的な側面もあります。

広告代理店から案件を受注し、制作(制作進行=PM=プロダクションマネージャー)が実行予算を算出、それをもとに見積を作成し提出、そして制作スタッフを提案、選定します。
広告代理店の営業やクリエイティブの意向を正確に理解し、CMディレクター以下制作スタッフのプランを、予算と作品クオリティのベストバランスを見極め、調整するスキルが求められます。

TVCMの仕事。“CMプランナー”

TVCMの企画を考える人。

広告代理店や、映像制作プロダクション、フリーランス、様々なCMプランナーがいます。

企画案は事前に絞り込まれてから数案プレゼンテーションにかけられます。

CMプランナーが自分の企画を通すためにはまずプレゼンされる候補に挙がらなければならず、さらにクライアントに選ばれなければなりません。
良い企画を提案するために裏で数多くの企画がボツになっているのです。


CMプランナーが手がける”企画”とはどういうものなのでしょうか。


TVCMにおける企画とは、方向性を決める指針です。

多くはアイデアやストーリーの雛形をクライアントにわかりやすく理解してもうために絵コンテ(企画コンテという)やビデオコンテ(絵や参考映像や仮撮影したものを簡易的にCMの形に編集したもの)の形式でプレゼンします。
しかしここではカット割りやアングルなどはまだあまり重要ではありません。
この時点ではCMディレクターもまだ決まっていないことも多く、イメージをガチガチに固めてしまわないように注意する必要があります。
あくまで”方向性”である事、柔軟性を保ったままCMディレクターに企画を渡さなければ、良い演出コンテに昇華できず良いCMを作る事はできません。


CMプランナーには、
広告としての訴求点を、伝わるであろう像に、数多く変換し提案するスキルが求められるのです。
レストランに例えるなら、CMディレクターは料理人でCMプランナーは”今日のおすすめメニュー”を考える人といったところでしょうか。

2017年5月25日木曜日

TVCM制作の流れ。

ざっくりではありますが、
TVCM制作の全体の流れの一例を。

クライアント(広告主)が広告代理店の営業にTVCMの制作を依頼します。

営業は大まかな依頼内容を受けCD(クリエイティブディレクター)を立てます。クライアントからのオリエンテーション(広告したい事案の企業側からの説明)を受け、企画の方向性を決めます。

ここから、CD主体で企画を決めていきます。

マーケティング(市場調査)等も参考にしつつ、CDCMプランナーを選び数案企画案を出させ、取捨選択や修正をし企画を詰めていきます。

企画の骨組みを決め、にコンプライアンス等様々な問題がないかを検証しつつコピーライティング(キーとなる広告用の文言)やアートディレクション(キーとなるデザインや映像表現)などを決めていきます。

映像制作プロダクションを選定し、プロデューサーを軸にCMディレクター(=演出=監督)の候補や企画ごとの予算を算出します。

幾つかの企画案(企画コンテや、ビデオコンテ)と(PPM資料=プリプロダクション資料=事前制作資料)をクライアントにプレゼンテーション(依頼に対する広告戦略の提案)をします。
ここで企画が通らない場合、修正案や、双六よろしく振り出しに戻ります。

企画が決まったら、CMディレクターに演出コンテ(企画コンテを基にした、より具体的なコンテ)を発注します。

ここからはCMディレクター主体で完成まで制作は進行していきます。
CD営業やクリエイティブのスタッフと共に全体的に企画の方向性から外れていないか、クオリティは保たれているか適宜チェックします。プロデューサーPM(プロダクションマネージャー)は実行予算管理、クオリティ管理、制作を進行するためのあらゆる準備や段取りを執り行います。


CMディレクター主体で撮影スタッフから編集MAスタッフまでのスタッフィングをします。オールスタッフ打ち合わせや場合によっては、音楽打ち合わせ、オーディションや衣装打ち合わせ、美術打ち合わせ、合成やCGなど技術的打ち合わせ、ロケハン(ロケーションハンティング=撮影地の選定)など数々の段取りを経て香盤表(撮影順序や段取りをまとめた表)を作成、撮影に挑みます。

香盤表に沿って撮影を進めます。
撮影にはクライアントも立ち会います。クライアントに撮影の説明をしながら商品撮影や広告内容に関する重要なカットをチェックします。

撮影素材のカラーグレーディング(色調整)を行います。
最近は予算削減のためオフライン編集後に使用テイクのみ行うこともありますが、
色調などは編集の印象を左右するため、望ましいのはオフライン前に全テイク行う事です。

オフライン編集(仮編集)します。容量の軽いオフライン用の圧縮のかかった全素材を比較的安価なシステムで取り込み、仮組みを行い試行錯誤を繰り返しながら編集組みを決めます。仮の音楽やナレーションでクライアントにオフライン試写を行います。

基本となる編集組みが決まったら、それを基に音楽録音、オンライン編集室ではカラーグレーディング済みの高解像度のOKテイクで再度編集組みを行い、エフェクトや各カットのブラッシュアップや微調整、テロップ入れを行い、MA室で音楽や同録素材、SEなどの各トラックのミキシングを仕込んでいきます。

試写前に文字要素の最終考査で新たなテロップ追加や場合によってはハーディングテストを行ないます。MA室ではラウドネス(CMの音量規定の基準値)の調整も行います。

クライアント、営業CDを筆頭にクリエイティブが揃い最終の初号(フィルム時代の用語、最終ネガからの最初のプリントを指す、その後オンエアするために複数プリントにかけるためこのような言い方をする)試写を行い、問題がなければ完パケ(=完成パッケージ=完成原版)を作成します。

オンエア計画に従って完パケからプリント(=ダビング=コピー、これもフィルム時代の名残)し各放送局に納品、局のチェックを受け、晴れてオンエアとなります。

実際はこの流れからさらに枝分かれして書ききれないほどの仕事やスタッフが存在します。
CM1本作るのに60名や70名はざらです。



2017年5月24日水曜日

TVCMの仕事。“CD”

CD(クリエイティブディレクター)


クリエイティブ(広告表現)全てを統括する責任者。

クライアントからの意向を正確に踏まえて効果的な広告表現を模索し提案し具現化するまでの全てのクオリティを管理し責任を負います。

CMディレクターとは違い、広告表現の全体像をディレクションします。受注、企画提案、制作、完成まで営業と共に全てに携わります。

コピーライターやアートディレクター等、クリエイティブの経験を積みこのポジションに就く場合が多いですね。多くの部署やスタッフを取りまとめる棟梁的存在です。

TVCMの仕事。“営業”

営業(アカウントエグゼクティブ)


クライアント(広告主)の窓口となり広告事案に関する様々な要望を受け予算を管理し、マーケティング、クリエイティブなど各部署と企画を練り、どのように広告戦略を展開していくのか提案します。

クライアントとの信頼関係と実力によっては全てを取り仕切るキーマンとなります。

ほぼ、この部署からの情報で以下全てのスタッフが動くためクライアントの意向を正確にそして的確に把握している必要があります。

CM制作がスムーズに進行し最高の結果をもたらすか否かのまさにキーマンと言えるでしょう。

おそらく広告業界唯一常にスーツを身にまとうポジションかもしれません。
業界の社会的信用度を保つの最後の砦かも。

2017年5月20日土曜日

合成っぽい。“カメラワークの不一致”

合成素材同士のカメラワークが合わないとき。

揺れている背景なのに合成された人物などは止まっていたり揺れが合わなかったり、一体感が無いと合成がバレます。

基本的に合成用の素材を撮影するとき、カメラはFIX(固定)が望ましいです。
手ぶれ感や若干ズーム等が欲しい場合は、まずはFIXで撮影し、合成後に動きを追加したほうが全体の仕上がりは良いでしょう。かなり動かしたい場合は高解像度(4K=横4000ピクセル程度の解像度)などで撮影し、アングルはゆるめに少し引いた画にしておく事が肝要です。


背景。

背景に合わせてFIXで人物のクロマキー素材を撮影。


編集室で画を動かす時には、フレーム内に画が足りなくなる事を防ぐためにブローアップする必要があるからです。

合成後、赤い矢印の、のりしろ分動かせる。




一方、
やはりどうしても演出上現場で動かしたいときは全素材動きを合わせる必要があります。

一番高額なのはモーションコントロールカメラを使う方法です。
合成する各素材を毎回同じカメラワークで撮影します。
コンピューターでモーターの制御を行いプログラム通りにカメラを動かします。

プログラムを打ち込むのに時間がかかりますが、一度決めれば何度でも同じ動きができるので、被写体を入れ替えたりテイクを重ねても大丈夫です。リアルに近い合成が望めます。

ただしあまり激しい動きや細かい動きは制御しきれないかもしれません。ちょっとCGっぽいカメラワークになりがちなのも難点です。

しかしカメラワークにダイナミックさや複雑な構成を要するときは、使うべきかもしれません。



また予算の都合でモーションコントロールカメラが使えない場合(実はこの場合が殆ど)は撮影現場にオフライン用の編集ソフトなどを持ち込み直接カメラから素材を取り込み、仮合成して動きの確認をとりながら撮影します。

これも時間がかかりますが、スタッフ全員が具体的にどうなるかを把握できるため、解決策や演出の変更など建設的に物事が進むメリットがあります。

背景が遠景だったりする時はカメラ移動によるパースの変化も影響しづらいのでクロマキーなどバックにターゲット(動きを検知するための目印)を置きそれを参考に後処理で背景をトラッキングする手もあります。

どんな方法で撮るにせよ、カメラワーク感のある合成をする時は、合成素材の一体感がないとチープな画になってしまうので注意しましょう。



2017年5月18日木曜日

トラッキング。

動いているものに合わせて合成などをするときに使う技術で、現場ではよく”追っかけ”と言われています。

もともとはミサイルなどの軍事技術で画像解析型の追尾機能からの転用でした。

今から20年ほど前にこの技術がハイエンドのノンリニア編集機にも導入されました。
それまでは1コマ1コマ手動で合わせていましたが、この技術により合成の精度が飛躍的に伸びました。

画像の特徴点(明暗や形のわかりやすい部分)を設定し、その部分を1フレーム毎に検出し、どこに移動したかをX(横方向)Y(縦方向)Z(奥行き)の座標軸上の数値で記録します。

1点ではXYポジション、2点でXYポジション、Z軸回転とスケールという様にそのポイントがどの様に動いたかを軸に展開します。

また、4点のポイントをトラッキングして看板やナンバープレートなどを入れ替えることもできます。

例えば自動車の走行シーン。
ナンバープレートの4隅をトラッキングします。
トラッキングデータを別のプレートの4隅に置き換えます。


その応用でスタビライズ、いわゆる手振れ補正も可能になりました。
移動した分の逆の数値を当てることで止まるということです。
X=0、Y=0の位置からX=10、Y=10動いたらXYそれぞれに-10当ててやると元のX=0、Y=0の位置に止まるという様に。

さらに多数ポイントをトラッキングして3D空間を解析することもできます。
これにより3DのCGなどの合成精度も飛躍的に向上しました。

今や映像作品にはなくてはならない技術になっています。

2017年5月17日水曜日

ハメ込み合成。

アプリ系のCMはもちろんのこと小道具としてもよく登場するスマートフォン。

実機と実際の画像を使い、輝度をあげて撮影した場合はそのまま使っても遜色ないこともあります。

しかし、画像が撮影時にまだ決まっていないなどの場合はハメ込み合成が必要になります。

まず、撮影時にスマホの傾きや動きをトラッキング(いわゆる追っかけ)するためにフレームの4隅にポイントを置きます。
白い枠の機種ならば黒い画面との角で追いかけることも可能です。

そして4隅が切れない様にカメラアングル内に収めておく事が、トラッキングの精度のために重要です。
もっとアップにしたい場合は高解像度で撮影し合成後ブローアップ(=拡大)しましょう。
画面の4隅にポイントを置く。
枠がわかる場合はポイントは必要ない。
写り込みの質は若干下がるが、
後に合成する画像の近似色にしておくのも良い。
枠の4隅がわかればポイントを置く必要もない。
写り込みをそのまま活かしたい場合は4隅のポイントも一緒に残ってしまうので後で消す(ゴマかす)作業が必要になります。
4隅のポイントを消す必要がある。

ポイントが必要ない場合はそのままでOK。


演出上問題がなければ、枠がわかりやすい色にした方が良いでしょう。

スマホはテレビ画面と違い、手持ちなので細かく3次元的に動きます。
トラッキングの精度次第で、合成っぽさが意外と出るカットなので注意が必要です。



2017年5月15日月曜日

ハーディングテスト。

光過敏性発作になりやすい映像かどうかを機械的に判断するという代物。

もう20年になるんですね。
黄色いかわいいネズミの怪物が”※アニメ番組上の演出”で巻き起こされた社会騒動が、ことの発端ではあります。


例えば、
バイク走行中の並走カットでライダーのバストショットを捉えた映像があったとして
暗めの背景に明るい色の電柱や看板が速いスピードで1秒間に3回ほど横切ったとしましょう。

多分このカットが引っかかり、これ一発で丹精込めた完パケを局から突っ返されることになると思います。

光過敏性発作というものを知り、ハーディングテストも参考にしつつその都度それに留意して映像を制作するってのが本当の対処だと思います。

確かに主観によるものが大きいので客観的に機械的にする方が楽なのもわかりますが。

もうこの問題は対応済みにしてしまったのかその後の改定策もなく、はや20年。
物事の解決策、もうちょっと柔軟性が欲しいものです。

未だに光過敏性発作に過敏になります。

2017年5月13日土曜日

お菓子。

お菓子の盛り合わせ、ズラリと並んだドリンク類。

色々な現場で制作の方たちが朝早くから両腕をパンパンにさせて汗だくで買ってきてくださいます。

とてもありがたい!本当に有り難いことです。
でも、つまらない。贅沢言ってごめんなさい!!

でも、「義務感」がみえます、みえます。

もともとそんなアメニティ?は義務から始めたものではなく、

長時間スタッフを拘束するのだから少しでも快適に仕事してもらいたいという気遣い
から始めたものです。

それは持て成す心です。

   でも先輩が準備しとけっていうんですもん。

…ですよねぇ
用意してあって当たり前になってしまった昨今、
なかなか持て成す気持ちなんて芽生えませんが。

せっかくの労力、意味あるものに昇華させた方が得です。

今日は暑いからこんなモノにしてみました、とか
風邪が流行っているのでビタミンC的なもの用意しました、とか
花粉にはヨーグルトがいいみたいですよ、とか…。

これスタッフやクライアントのこと考えながら用意してくれたんだなぁが無いとせっかく準備して頂いても勿体無いです、なんか。

プレゼントを用意する感覚、持て成す気持ちが見えた時、その効果たるやみんなその人が
大好きになっちゃいます。

費用対効果ぱないです。ゲンキンですね人って。

意外と現場あるある

2017年5月10日水曜日

肌修正など。

撮影後、オフライン(仮編集)をチェックしオンライン(本編集)作業に入るわけですが、その時に出演者の肌修正を行うことが増えてきました。

CMが主流で、ドラマなどは殆どなかったのですが、最近はDVDやBlu-ray化などの為、先行で修正作業も増えてきたようです。

1回のオンエアでは気にならなくとも、ソフト化されると細かく何度も見られることを想定しているのでしょう。

後処理の肌修正は、ヘアメイクとは違い本人不在の場所で行われることがほとんどです。
そして監督や制作部などの立会いのもと、エディターが行います。

目の下のクマや、目尻などのシワ、ホウレイ線、ホクロやニキビ、鼻毛、様々な部分を消したり、ボディーライン、あごの形状、歯の色、眼の充血を抑えたり。

本来ならば万全の状態で撮影に臨むのが出演者としての責務だと思いますが、何らかの理由で修正が必要ならば、芸能プロダクション主体でちゃんと別枠として修正依頼をした方が良いと思います。

芸能プロにとって所属タレントの容姿はまさに重要な商品ファクターなのですから。


肌修正やシルエット補正の手法としては数々あります。ボカシ、ノイズ消し用のフィルターの組み合わせ、別肌テクスチャの移植、ワーピング(画像を歪ませる手法)etc...。

しかし安易にしてしまうとバレる修正になってしまいます。特に顔は一番注目する部位なので不自然さには敏感に感じてしまいます。

また、スチル(写真)は高解像度の修正が求められますが、静止しているのでそのアングルのみを考えれば良いのに対し、ムービーは動くので連続性も踏まえての修正が必要になり、難易度が高くなります。

顔の構造や筋肉の動き、本人らしさなど見極められる、いわゆるセンスが必要なのです。


2017年5月8日月曜日

ソソルCM。

例えば、食べる。

本能的な欲望。
”おいしそう”の定義は人それぞれですが結局食すという行為は本能です。

お行儀よく食べるのは人前でのマナーとしては必要ですが、食欲がそそられる光景には少し程遠い気がします。
多少は口元を汚しながらがっつく、むさぼり食らう。反感を持つ人もいるでしょうが食欲をそそられる人も多いようです。

そういったがっつく食品のCMを流すとクレームの数も多いようですが、それ以上に売り上げが伸びるそうです。

いちいちクレームにヒヤヒヤするのではなく、広告主と広告代理店、制作プロダクション、CMディレクター以下スタッフが一丸となって信じた方法で商品の『売り』を主張する。

とてもシンプルだからササル。

…こともあると思います。

人の視覚。

撮影や、合成、画像加工などのときに人の視覚の特性を知っていることはとても重要なことです。演出意図に沿った効果的な画作りや色の構成に役立ちます。

人の視覚は、色を感知する錐体(スイタイ)と明るさを感知する桿体(カンタイ)という2種類の機能を持つ視覚細胞で光を認識しています。

光量が十分にある時は錐体が活発に活動し、薄暗い時は主に桿体で光を捉えます。
薄暗いと色がよくわからないのはその為です。

しかも錐体は赤、緑、青、それぞれの色にのみ感知する3種類しかありません。

たった3色分の錐体細胞であらゆる色を感知し得る非常に優秀な構造だと思います。

”光の3原色”
これは人の色覚の構造をあらわしています。赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の光でフルカラーを表現出来るというものです。

例えば、
黄色い波長の光は赤と緑の中間の波長なので、赤担当の錐体と緑担当の錐体がそれぞれ反応します。そのパターンの信号を受けた脳はそれを黄色と感じるのです。緑と青の錐体だとシアンブルー(青緑色)に感じます。
3種の錐体がどの様に刺激を感じるかで、脳内で色を構成しているのです。

その視覚の特徴を利用したのがテレビなどの映像機器の画面の構造です。

拡大鏡で画面を見てみるとびっしりと配列されたRGBの発光が確認できると思います。
このRGB各々の発光量を調整することで色を表現し画像を構成しています。

例えばRとGを同程度の明るさで、Bを消して黄色を表現する。RGB全て発光して白、逆に全て消して黒、という具合です。


よく見るこの図。
画面を拡大するとこの様なRGBの配列が発光しています。
最近の画面は高精細なので、かなり拡大しないと確認するのは難しいかもしれません。



人は色の差分認識が明暗の差分認識よりも鈍感にできていると言われています。
おそらく色よりも明暗差の認識の方が人類が生き残るのに重要だったのでしょう。

同じ輝度の色(モノクロにしたときに同じように見える明るさ)ならば、色の境界はそれほどシビアでなくとも気になりません。
モノの形を認識しているのは明暗差だからです。鉛筆デッサンだけで充分形を認識できるのです。

そのことを知っているだけでも画像を加工する時に気をつけるべき点がわかってきます。




2017年5月5日金曜日

合成っぽい。“不自然なエッジ”

輪郭が自然では無いとき。

目立つのは頭部。
ショート系やパーマの毛髪など単調では無い輪郭は合成でバレやすい部分です。
柔らかく動きもあり細かい隙間でグリーンバックなどがジラジラ見え隠れ…。
ここをなるべく毛を先端まで失うことなく柔らかく合成すると自然な仕上がりになります。

頭頂部のみですが細かく書いてみました。

上の画の頭頂部を拡大したもの汚れやつなぎ目を消そうとすると、
毛先などの部分も一緒に消えてしまいそうだ。
そんな繊細な部分を合成するときにバックのグリーンなどが汚かったりサイズが足りなくて2枚使いの境目だったりすると、これは毛なの?、汚れなの?、境目なの?ってことになり自然な仕上がりへの道のりは険しく遠くなっていきます。

バックが均一グリーンの方が繊細な部分も検出しやすい。
この様に毛先などの細い部分はもともとバックに溶け込みやすい為、できるだけ損失しないように均一のバックを心掛けたいものです。


ブレて撮影されている状態。
そして意外と盲点なのが輪郭のボケや、早い動きでブレた場合。
輪郭とグリーンバックなどがエッジと混ざってしまい非常に抜きづらい素材となってしまいます。※イラストは、理解を深める為に意図的に分かりやすくしてあります。 
ブレた部分のグリーンが抜けきらず残ってしまっている。

画止まり良く撮影できた状態。

同じ抜き方でもグリーンが綺麗に抜けている。

この様な事態を避けるためには、
カメラマンの横に何気なく近寄り、『これはクロマキー素材なのでパンフォーカスめでお願いします』や、『画止まり重視でシャッターキリメデお願いします』、『HSで撮影してください』と言いながら土下座すると快諾してくれると思います。

もしくは、

『だから照明やカメラ機材ケチるなと言っただろ』って怒られます。
照明ケチったから光量が足りなくアイリス絞れないし(=絞ると手前から奥までピントが合いやすいが光が入ってこなくなり光量が多く必要)、シャッターも切れない(切るとシャッターが開いている時間が短くなり画がブレ(モーションブラー=被写体ブレ)にくくなるが光が入ってくる時間も短くなり光量が多く必要)、カメラ機材ケチったから明るいレンズじゃないし、HS(ハイスピード撮影=撮影駒数を増やすことでブレを軽減)も撮れない。撮像素子も低性能で…あーたらこーたら。

クロマキー合成の時は内容を見極めて機材選びを。
当初機材費は抑えても、仕上げで大オーバーする事もしばしば。

お金は使うべきところに使わないとかえってあとで嵩みます。

ブレやボケは後で加工できます。もちろん実際撮影したモノの方がクオリティは高いです。

しかし、合成する以上まずクリアするべきは合成のクオリティだと思います。


2017年5月4日木曜日

合成っぽい。“光の不一致”

光が合わないとき。

どんな合成でも自然に見せるには、光を合わせることが最も重要です。
ヒトの視覚は、その特性上、明るさの違和感に敏感だからです。

例えば、
背景がロケ(=ロケーション=野外)撮影したものに対して、人物をスタジオ内で撮影しクロマキー合成する場合。

この場合、天候は左右できませんし、ロケ時は様々な制約があるのでロケ分を先行撮影し、それを基準にスタジオでじっくり合わせるのがセオリーです。

ロケ撮影が終了し、今度はスタジオで天候を再現します。
そんな時、よく照明さんに言われませんか?「天井が高いスタジオにしてね」って。
この例の場合、ロケ撮影時は基本的に太陽光で撮ります。
それと光を合わせるには?…スタジオに太陽が必要になります。

昔学校で習ったような気がしませんか?太陽光は限りなく平行線の光だって。
太陽はほとんど無限遠の光源です。光は光源から遠ければ遠いほど平行に近くなります。
太陽光はそこにいる誰にでも均等に当たる光なのです。

しかしスタジオで使うスポット光には芯があり芯の中心から離れるほど光量が落ちます。
太陽に近づけるためにはどうしたらいいでしょう?

光源が低いと光の芯の範囲が狭く明るく、高いと広く暗くなります。
スマホのライトなどで手のひらを照らしてみてください。ライトを近づけると光の芯部分は明るくなりますがその周りとの差は大きくなり、離すと全体的に暗くなりますが差が少なく全体を均等に照らされるようになりませんか?
日中、外で同じように手のひらを日に当ててみると、手を大きく動かしてもほとんど変わりません、地球規模で移動しない限り。

理科の授業みたいになってしまいましたが、スタジオで太陽光になるべく近づけるためには高い(遠い)位置から、光量の多いライト(HMIなど)が必要なのです。
もちろんそれはキーライト(メーンのライト、ここでは太陽の直射の代わり)であり、他にも反射光や環境光などを再現する様々なライトや機材が必要になります。




2017年5月3日水曜日

クロマキー。

クロマ(chroma=色の成分)でキー(key=マスク=ハイコン=アルファ=合成用の輪郭のデータ)をつくること。

ブルーバックやグリーンバックで合成素材を撮るクロマキー撮影。
より自然な合成を目指すならば、被写体の周りだけでもムラのない均一な色で撮影しましょう。
バックが均一である程、髪の毛の様な繊細な輪郭をを得ることができます。


* * *

ちょっと脱線します。

クロマキーの誤解で、
ブルーやグリーンで撮影しておけば何でも消えてくれると思っているスタッフ。意外とたくさんいます。

例えば、


スタッフがグリーンの全身タイツを着て、美術セットの撮影フレーム内に見切れていたとしましょう。
「あ〜グリーン着てるから後で消せますよ〜」って一発撮影して終わりのパターン。


いやいや、そのグリーンマンで隠された背景は撮れていませんし、顔やUFOを釣っているテグスも消さなければなりません。


もうワンショット必要です。空舞台(カラブタイ)を同ポジ(=同じカメラアングル)で撮りましょう。


しかし…
この様な場合はそもそもグリーンマンは必要ありません。空舞台さえあればUFO以外すべて消せます。WIPEやガベージキーを使って。

この消し方はまたいずれ…


* * *


被写体と干渉しないならクロマキー素材は単色ならば何でも構いません。
そもそも何故ブルーやグリーンなのでしょう?

黄色人種(黄色なんて言いつつやはり肌は赤成分が多い)や白人など肌の色の薄い人の反対色だからです。
色の差分で境界を検出するためです。
デ○ラー総統やピッコ○大魔王を撮影する場合はレッドバックで撮影しましょう。

グリーンが主流になっているのはブルーに比べ明るいので合成後の輪郭が自然に見えるからです。
合成後が暗い背景のときはブルーを使ったりもします。最近はサウスシーブルーなど明るめのブルーも使われることもあるようです。条件によって使い分けると良いと思います。


2017年5月1日月曜日

※ CM上の演出です。

最近決まり文句になってしまったこのテロップ。

広告主に対しクレームを言われるであろう表現に対し、前もって入れておく文言(言い訳)です。

その他にも様々な言い訳テロップがCMには入れ込まれています。到底数秒で読み切れない文字の量。

TVCMという15秒や30秒で語れる内容は限られています。その秒数内に商品の良さを訴え、商品名を覚えてもらい、購買意欲を誘う。
初見では中々伝わらないので何回も集中的もしくは購買層の時間帯に合わせてオンエア。

シンプルにしかも記憶に残るコピー(広告用の文案)を模索してプランを練っても、その他の要素を盛り込みすぎて効果を半減させてしまいます。

15秒で伝わることなんてコピーと商品名だけなんです、って割り切れれば。

やっぱり邪魔な言い訳テロップ。

取説の本文よりも多いかもしれない注意事項も然り。

このままエスカレートすると刑事ドラマの殺人シーンで
※ドラマ上の演出です。殺人は重罪です。マネしないでください。
なんてテロップ入れなきゃならなくなったりして。


『よい子はマネしないでね』で済んでいた頃が懐かしい。

※ CM上の演出です。この商品を与えても行儀よく並ぶことはありません。